知識の獲得と反省の積み重ねが、進化の両輪
西香織/慶大文3/制作進行補佐/2019年11月登録/埼玉県出身
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このブログは、ビジネスアスリートのスターを目指すサクラスの学生インターンが、同僚のインターンに対して、同じ目線からインタビューをしていく。
今回は、私、田中里奈が西香織さん(以下西さん)に取材した。西さんは8月度のMVPを受賞している。
インタビューでは八月の業務を中心に、どのように仕事と向き合ってきたか、自分自身にどのような変化があったのかを聞いていく。
(写真は全て西さん本人に提供して頂いた)
ーー8月は、どんなことをしていましたか?
ある漫画作品の販売促進に携わっていました。より多くの読者に作品を知ってもらう手段として、PVやボイスドラマを作る仕事、作る人を支える仕事です。
ーー最初はどんな気持ちでしたか?
制作分野の仕事を担当したのが初めてだったので、全体像が見えないことに対して不安がありました。制作分野の仕事は面白そうだと思っていましたが、同時に失敗はできないという緊張感もあり、少し怖かったです。
しかし、とりあえず必要なことは全部知ろう思って資料を全て読み込み、作品などについて勉強したことで、少しずつその不安は取り除かれていった気がします。
ーー仕事ではどんなことを工夫しましたか?
私は制作進行を補佐する役目で、制作現場と顧客企業との間に入っていたので、単なる「伝言役」にならないことはもちろんなのですが、それ以前に少なくとも仕事を止めてしまうことがないように気をつけていました。確認作業が自分のところで止まるとその後の仕事の進捗が遅れてしまいます。工夫しているポイントとしては、スケジュール上では予定がない日でも、先周りして気をつけるべきことないかと気にかけています。
例えば最近も、ある重要な制作物を無事納期までに納品できたのですが、そこで安心せずに、今だからこそ先回りしてできることがないか?を考えました。私は実は「反省ノート」のようなものをこっそり作っていて、定期的に見返すようにしています。その時もそのノートを見返していたら、以前ある工程が漏れていて、後になって指摘してもらってとても悔しい思いをしたことを思い出しました。その工程は今回も必要なものだったので、今回気づいたときにはすぐにチームメンバーにリマインドすることができました。
ほっと一息つけた瞬間こそ、見落としがないかを再点検するいい機会だと思います。
ーーなぜその工夫を心がけたのですか?
当たり前ですが、制作の仕事は、締め切りに間に合わないといけません。今回の場合であれば、作品の発売日が決まっています。作家の先生がどれだけ苦労して作品を締め切りに間に合わせているかを日頃から池上に聞いていたので、私たちの制作物が締め切りに遅れるようなことがあってはいけないという意識が、工夫する姿勢につながっていると思います。
誰かから「〇〇をしてください」と指示を受ける時点で、実は既にタイミングが遅れているんですよね。必要だと言われる前に、自分から動くようにすることが重要です。
ーー「先回りして動く」というのは、言うのは簡単でも実際にできるようになるのは難しそうですね。
そうなんです。そして「スケジュールを守る」というのは大前提で、実はその先はもっと難しい。制作現場と顧客企業の間で「スケジュールを守る」というだけでは、単なる「伝言役」になってしまうこともあります。
ーー「伝言役にならない」というのは、先ほども少しおっしゃっていましたね。「伝言役」というのは、具体的にはどんなことなのでしょうか?
「伝言役」というのは、制作現場と顧客企業の間で、一方から聞いたことを何も考えずにそのまま一方に伝えてしまうようなことです。いわゆる「付加価値」が無い状態ですね。プロジェクト全体から見ると、自分が間に入ることで時間とコストだけを消費してしまっている。間に入るからには、「いてくれて助かった」と思われなければなりません。「邪魔だから直接やり取りした方がマシ」と思われたら良くないですし、そもそも本当に実際そうならば、直接やり取りしてもらった方がプロジェクトのためにも視聴者のためにもそれがベストですから、そうしたらいい。でも、実際はそんなに簡単じゃないんです。
ーー西さんは、「伝言役にならない」ための工夫は何かされていましたか?
今回の場合、私は制作物のクオリティについて意見を言うことよりも、周りの人たちがまだ気づいていない落とし穴に、少しでも先に気づくことができるよう努めました。元々心配性な性格で「あれ大丈夫かな、これは大丈夫かな」と気にすることが多いんです。スラックの自分向けのチャットスペースで次にすることをリストアップしておくと心配性な私でも安心できて、そのことでチームとしての危機察知に少しでも貢献できたように思います。
ーー苦労したことは何ですか?
先ほど「クオリティについて言うのは控えた」と言ったこととも関わることなのですが、社会人、しかもその道の専門家の方々と仕事をするにあたり、制作物に関して自分がどこまで意見を言っていいのかは、正直迷いました。実際、最初は思うことがあっても「様子見」で、何も言いませんでした。
しかしある時、池上さんから「サイトのボタン一つに関してでも、自分の考えを持つように」と言われました。スケジュールを守るのに一生懸命で、「いいものを作ろう」という意識が足りなかったのです。それからは自分のやっていることや作っているものに対して、簡単・小さなことからでも意見を持とうと努力しました。ただ、それはそれで簡単なことではなく、「サイトのボタン一つ」であっても、利用者の気持ちになって考えることの難しさを知りました。
ーースケジュールを守るということができてきて、クオリティについても意識されるようになっていったのですね。クオリティについても意識することで、変わったことはありますか?
そうですね。結果的により高い視座で全体感を持って仕事ができるようになりました。それによって、自分以外の人と積極的に関わっていくことも、増えていったように思います。今までの仕事は、記事を書くなどある程度のところまでは自分一人で進められれるものが多かったので、自己管理がしっかりしていれば大きな失敗に繋がることはなかったです。
しかし、8月のお仕事ではクライアントや池上さん、他のメンバー、担当の人など多くの人とやりとりすることが多く、全体を把握しておく必要がありました。他の人が何をしているのかを把握したうえで、自分が何を指示するのか、何を頼むのかを常に考え、何故今これをやるのか、どういうスケジュールで進めていくのいかなどを言語化して理解することを心がけました。
プロジェクトの真ん中にいたからこそ、チームのメンバーの状況を知らなければ、メンバーのサポートもできません。他の人の分まで、進捗の状況や漏れがないかどうか、スケジュールは順調かなどを知らないといけなかったため、責任もより大きくなったと感じました。特に、時間がない時は時間を細かく順序立てて計画していくことが必要ですし、頭の中で全体を理解していないとスケジュールが立てられませんので。
ー仕事をする上で、最近特に意識していることはありますか?
チームでのコミュニケーションです。最近は特に、他の人と仕事をしているという意識が芽生えました。
今までは業務連絡のやりとりが多かったのですが、最近会社では、お互いの状況を確認してたり、わからないことが聞きやすい環境になったりと、交流が増えました。そのため「これが必要だから、あの人に頼もう」「あの人がこれが欲しいって言っているから、これを用意しよう」「あの人はこの業務が初めてだから、わからないことが多いかもしれない」「あの人は経験者だから聞いてみよう」などを考えることが増えたと思います。スケジュール的にできないことがあれば助け合うことも増えました。「助けられる」回数より、「助ける」回数が多い方がいいということは池上さんがよくおっしゃていますが、他の人について考えることや全体を俯瞰することは重要だと思います。
また、リモートでも相手を配慮してやりとりすることを意識しています。
オフラインでの仕事であれば、その場で質問しやすいですが、リモートは文字でやりとりしないといけないうえ、連絡がつく時とつかない時があります。その分、言葉自体に注意したり、予め必要そうだと思うことは、5W1Hを情報に盛り込んだりしています。
ーー最近できるようになったことはなんですか?
先を見越して、伝える情報の取捨選択ができるようになったことです。
今までは、スケジュールのリマインドをする時に、向こう一週間の予定全てを送っていたのですが、それだとスプレッドシートやRPA(注:ロボットによる自動化)の代理をしているのと変わりません。
最近は優先順位づけをしたリマインドができるようになりました。例えば、向こう一週間の予定を予め、1.外部要因がボトルネックになりそうなこと2.準備に時間がかかるなどリードタイムが長いもの3.独立してすすめられること
などに予め分類することで、優先順位の高いものからリマインドを送れるようになったと思います。
ーーどんな時にやりがいを感じますか?
SNS上で、自分の担当した仕事の反響を見た瞬間です。
今やっていることが、こんなに喜んでもらえているのだな、ということを実感できました。
ーー今後クリアしたい自分の目標はなんですか?
作家の先生が心血を注いで作った作品をより多くの人に知ってもらうために、「どんな場所でどんな方法で何を発信していったらいいか」を提案できるようになりたいです。これまでは、要件が決まった状態で納品することに一生懸命だったのですが、少しずつ自分からも提案していけるようになりたいです。振られた仕事がきちんとできることが大前提ですが、その先に、自分から提案もできるようになりたいです。
いつかは自分の好きなものと自分の好きな作品を掛け合わせるという仕事にも挑戦したいですね。もちろん仕事は仕事なのですが、自分の好きなものや好きな作品を広めて、市場や世間の評価を高めることができたら、プロとしても気持ちが乗ってくると思うからです。サクラスはそういうことができる会社だと感じます。
ーー西さんにとって、ビジネスアスリートとはなんですか?
進化し続ける人です。
最近漫画の『ハイキュー』を読んでいて、登場人物がみな、何らかの「反省」をもとに成長していることに気がつきました。「反省」と言ったのは、自分や身近な人のある一瞬に対する洞察をもとに、気付きを得ていることです。例えば作中、主人公は過去の対戦相手の中で一番ブロックが上手だった選手からイメージを得て、それを全国大会で自らのブロックに活かします。バレー選手としては身長の低い主人公ですが、過去に自分たちのチームを苦しめた相手の技術を見て盗んで、すぐに実践し自分のものにしたわけです。自分が高校時代にやっていたのはバドミントンだったのですが、思うように上達できず悩んでいたことがあります。その時は、基礎中の基礎であるクリアやレシーブが苦手で、試合中も悔しい思いをしました。それでも、何でできないんだろう、で止まっていたんですね。今思えば反省や気付きが足りませんでした。
しかし、最近の仕事では、当時よりも自分自身の成長を実感できています。仕事を始めた頃は、やることの項目を潰していくことで精一杯だったのですが、反省できるようになったことで、自分がまだ出来ていない点が見える化されたと思います。
スケジュール管理の優先順序付け、発言の目的を考えること、自分がコントロールできないことをオーバーコミットしてしまう、最終的なアウトプットのイメージが持てているか・・・・・・など、自分でできているつもりができていないことがたくさんありました。
このように気がつけることが、仕事をやってて良かったと感じる瞬間でもあります。それがスポーツではできなかったけど、仕事ではできている気がします。それを書き留めているのが先ほど挙げた「反省ノート」です。「どうすればもっとうまくやれたのか?」を考えた末の発見を書き留めていて、定期的に見返しています。
ーー最近「進化している」と感じることはありますか?
一つ目は、自分の中のスケジュールに対する考えが変わったことです。具体的に考えられていないから土壇場で焦ったり、把握していたつもりだったものが把握できていなかったたりした経験から、考えを見直すことにしました。スケジュールの全体を見て、有機的にやることがつながっているという意識が生まれました。
二つ目は、自分が関わっている仕事についての勉強をする意欲が高まったことです。先ほどの経験からの学びを促す「反省」と、外からの「知識」の吸収は、進化に必要な車の両輪だと思います。知識が足りなければ、本当はもっといい選択肢があっても提案できません。
広めたい対象の作品がどんな人に刺さるかを考える時も、その市場の界隈や類似作品を知っていないとわからないことがあります。先行事例をベンチマークできると、それをひな形としてターゲット顧客や作品の魅力を考えることができます。ですので、担当作品の周りの市場を知り競合を知って、提案できることをふやすことが、成果に繋がる結果を生み出せると思います。
ーー「知識」の吸収は、どのようにしているのですか?
今は、同様の仕事をしているチームの皆で定期的に打ち合わせの場を持っています。その中で、池上さんに参考資料をもらって分析したり、利用実態などに関する調査資料や各プラットフォームの媒体資料を自分たちで調べたりして、テクノロジーを活用してを作品を広めるためにはどうしたらいいかを考えています。チームとして達成していきたい目標もあるので、今後メンバーそれぞれが担当する媒体についてお互いに教え合うことをしていきたいです。
また、担当作品と同じジャンルの作品を読んだり、手を出してこなかったジャンルにも挑戦したりして、作品の魅力を知ることもしています。
ーー今後の展望を教えて下さい。
幸いにもエンタメ業界に関わらせてもらっていますが、今後も人の喜びに繋がる仕事がしたいです。制作に関わらせてもらっている経験や学びを生かして、サクラスでも今後のキャリアでも、自分で人に喜ばれるものを作っていける人になりたいです。
今日のインタビュイー
西香織(にしかおり)
慶應義塾大学 文学部3年。
2019年11月入社。広告業務担当。
(文/田中里奈=慶應義塾大学環境情報学部1年)
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