2021年度株主選手交流会
1月某日、オンラインにて2021年サクラス新年株主選手交流会が開催された。
本稿では、株主選手交流会の一部をお伝えする。
ーーはじめに池上社長からの挨拶があった。
池上: 本日はお集まりいただき有難うございます。今年はリモートではありますが、前年に引き続きこのような会を開催できたことを嬉しく思っています。
2020年の世の中は一般に、新型コロナウイルスの影響で非常に厳しい1年となりました。そのような中で弊社は、当初予定していたようにエンタメ×金融の新規領域は進められなかったのですが、インターネット広告の領域で事業を成長させることができ、これまでのところは、株主の皆さまにも安心していただける結果になったのではないかと思います。
昨年は新型コロナウイルスに対し、どうしても会社として生き延びることを最優先にしてきたところがありましたが、今年2021年はエンタメや出版といった日本の大事な文化に貢献できるよう頑張っていきたいと思います。
ーー続いて池上社長から財務報告があったが、ここでは省略する。
ーー次に、サクラスの選手(学生インターン)紹介があった。順番に10名の選手が紹介された後、株主から組織体制についての質問があった。
株主: (選手名簿に)「C」や「R」といった文字が記載されていますが、どのような意味でしょうか?
池上: Cはチームのキャプテン、Rはルーキーで主に今月から新しく入ってきた選手です。なお、階級とは別に「チーム」欄がありますが、こちらは各選手の今月の所属チームとなります。毎月、選手を3チームに分け、顧客や業績への貢献を表すポイントを競っています。月間の優勝や月のMVPといった表彰も取り入れています。
株主: 「委員」欄について、風紀委員や強化委員はどのような取り組みをしているのでしょうか?
粟根(1月度風紀委員): 風紀委員としての活動は、主にサクラスの社訓や社則を週に1つ取り上げ、朝礼の際にその遵守を徹底するよう呼びかけを行っています。例えば今週はSlackできちんとリアクションを取るようアナウンスしました。
株主: おお、とても大事なことですね。
池上: リモートワークであっても、会社の「雰囲気」は重要だと考えています。この冬からコアメンバーのみの有料版Slackを設けましたので、リアクション率などもKPIとしてモニタリングしています。
株主: 強化委員はどのような取り組みをしていますか?
渡邊: 強化委員はサクラスの組織力を強化するために新しい選手を増やす、ルーキーメンバーに問題なく会社に慣れて戦力になってもらうことを主として活動しています。
株主: 教育委員とは何が違うのでしょうか?
渡邊: 教育委員は学生インターン全員が対象で、強化委員は新戦力の強化に集中して取り組むという認識です。
池上: イメージするならプロスポーツクラブの強化部長のようなものですね。
ーーその後、池上社長による今後の方針についての説明があった。
池上:今後もエンタメ×DXを中心に事業を行っていきます。新型コロナウイルスの影響でエンタメ業界の業績が厳しくなっているため、デジタルの力で貢献していきたいですね。
中核商品は広告になると思います。足元ではコロナ禍でデジタル広告の需要が非常に高まっていて、そうした現実的な要望に応えることも必要なことと捉えています。業績を維持しながらエンタメ業界に貢献したいですね。
組織やシステム面では、学生の組織作り、仕組み化は良い方向に進んでいるため今後も継続していきます。マニュアルやポイント制度等も充実してきたのでレバレッジして更なる業績拡大につなげたいですね。
また、コロナ禍をきっかけに新しい労働環境に適応し、かえって生産性は高まりました。リモートワーク中心となった現在ですが週2回の朝礼やSlackの導入で以前より結束力も高まっていると感じます。「同じ場所にいなくても、一緒の場所にいるような働き方」になってきていると思いますね。
ーー説明の最後には「株主の皆様には弊社の取り組みに期待して欲しい」という池上社長によるメッセージがあった。その後、株主からの意見、質問が続いた。
株主: 従来の会社の不具合や課題をサクラスはこのような取り組みで解決しているというような資料があった方が良いと思います。
池上社長はサクラスのような新しい働き方をする会社が増えて欲しいですか?
また、どのような会社が理想でしょうか?
池上: 時代の変化に合わせて新しい働き方ができる会社は増えて欲しいと思います。理想としては「出勤したくない人はしなくていい」ような会社ですね。
株主: 働き手を「選手」と呼んでますが、会社と選手の関係を教えていただきたいです。
粟根: 選手はスポーツ選手に由来しており、選手がフィールドで実務を担い、社長はフィールドに立たずに全体の指示を行う監督のイメージです。
株主: 「選手」と一般的な「社員」の違いは、選手はフィールド上で自分の意思で動く、社員の場合は会社のルールや指示の中で動くということなのですね。
池上: 社会が評価するという認識は大事にしていますね。上司が評価するのではなく、選手達の活躍は社会が評価するという認識の共有を大事にしています。
司会は1月度総務委員の古賀(聖心女子大学3年。昨年11月に月間MVPを獲得。12月・1月とチームK2を率いるキャプテンを務める)
ーー株主紹介、2020年の年間表彰が続き質疑応答の時間となった。
株主: 西さんがトップの成績を残せた要因は何でしょうか?
西: はじめはとにかく目の前の仕事を全力で行いましたね。その結果、池上社長からも大きな案件を任せてもらえるようになり、成績につなげることができたと思います。
株主: 選手のモチベーションはどのように維持されているのでしょうか。また、どのようなイベントがあればいいかも教えていただきたいです。
池上:これは皆一斉にチャット欄に書いてもらいましょうか。
ーー選手達がチャット欄に記入したモチベーションの源泉について株主から質問があがった。
株主: 今年からの導入だと思うのですが、(KPIを可視化した)ポイントがモチベーションに繋がっていると記載している選手が多いですね。
池上: ポイントに関係ない雑務や集まりももちろんありますが、ポイント制度導入後は、極力ポイントを中心に会社を回すことを意識していましたね。
株主: 選手の皆さんがポイントにモチベーションを感じる点は理解しましたが、皆さんと同じ世代の方々の多くも同様なのでしょうか?
池上: 世代的には「競わされる」ことが嫌な人もいるのではないかと考えています。私個人的には競争賛成で、ポイント制を導入していますが。
株主: それではサクラスにはゲームのように楽しく競うことが好きな学生が特に集まっているのでしょうか。
池上: 好きな学生、好きではない学生がいるのは事実だと思いますね。過去の例を見ても、競うことが嫌いな学生はいると思います。それで辞めた学生もいます。ただ、今残っている学生を見ると、例えば受験勉強での成功体験が影響して競うことが苦ではないという学生もいるのだと思います。
株主: 選手のモチベーションがポイントであれば、ポイントに関係しないと行動しないといった動きが見られる恐れはありますよね。スタートアップを例にすると、ポイント等に関係なく行動しなければならない。何かに気がついたら自分が行動するという意識を持った人が集まっているため、ポイント制とのバランスが重要になってきますね。
池上: そうですね。その懸念点も踏まえ、今月から委員会制度を導入しました。学生による会社の自治を進めたいという教育的狙いもありますが、ポイントに関係なければ誰も公務を行わない恐れがあったため導入したという背景もあります。
株主: いまコメント欄を見ていたのですが、選手達にとってポイントは競うものというだけでなく、顧客からの評価という意味合いも強いようです。
池上: 確かに、その通りですね。ポイント制度は手段であって、目的は顧客からの評価の可視化です。そのため単なるゲームという認識ではないかもしれません。
また、競争というと「相手を負かす」というイメージもあるかもしれませんが、皆、競争相手よりも顧客の方を向いてくれていると感じます。制度上も皆の性格的にもライバルの「足を引っ張る」ということもないため日本企業の政治的なしがらみのようなものを回避することができますね。フェアに評価できる仕組みが出来ているのではないかと考えています。
株主: 単に時給で働くのではないという制度は新しいため、この制度がより良くなっていくと多くの人に影響を与えることができると思います。
池上: はい。日本の大企業でリモートワーク導入後に労務管理や残業の問題が生じていることを頻繁に耳にします。労働時間で評価する仕組みではなく、どのようにして成果を評価していくのかが重要だと考えています。
株主: 優秀な人が集まる組織を運営する上で評価体制を誤ってしまうのは問題ですよね。コンサルを始めとしたプロフェッショナルファームが人事の仕組み作り、社員の育成に膨大な時間をかける理由は評価体制の大切さを知っているからですね。
やる気のない優秀な人材は働かなくなり、やる気のある優秀な人材は良いアウトプットを出し続けるため、モチベーションを維持するためにも正当な評価は重要だと考えています。
池上: 今あらためて感じたのですが、コンサル時代の「人を大切にする」環境が今の私に大きな影響を与えていると思います。その時の経験が今の組織づくりに繋がっていると思います。
株主: (コメント欄には)自分の可能性に挑戦したい、自分の学校を代表しているという気概が持てる、というものもありますね。
池上: 嬉しいですね。今の学生は多様な考えを持っているため、それぞれが自分に合った場所を選べることが重要だと考えています。そういう意味では事前にどのような会社であるかも、しっかりと伝える必要があります。サクラスの場合であると目的やミッションを重要視する一方、競争的な文化もあって、しかしそれは顧客のためであって、顧客にバリューを出すことが第一。そうしたことを事前にしっかり伝えて、組織に根付かせたいですね。
ーー最後に株主から、会社への期待のメッセージが寄せられた。
池上: 会社への期待、選手(若い世代)への期待を教えていただきたいです。
株主: そうですね。従来とは違う働き方、違うプロジェクトでクライアントと社会に良い仕事ができることを世の中に伝えてほしいです。今までの常識に浸かってしまっている、固定観念が強いにも関わらず生産性が低い会社が世の中には沢山あります。そのような会社を改革したいですね。
今の世の中では、若い人たちが楽しく働く会社の解が見えていません。選手達がサクラスでの経験を今後の人生にどのように活かしていくのか関心がありますね。
サクラスには新しい働き方、新しいキャリアのモデルケースになってもらうことを期待しています。
池上: はい。Jリーグの場合はユース、野球の場合は甲子園など、プロになる前に実践できる場所があります。しかし社会人にはそれがない。そこに私は問題意識があり、選手を雇うという取り組みを始めました。今後の社会のモデルケースになることができればと思います。
株主: 選手が学生のみに限定しているのは勿体ないと思います。相手のマーケティングゾーンに合わせ、社会人がいたり老人がいたりと「いつ誰が働いていても、それぞれの価値を発揮できる」社会のきっかけにサクラスがなることを期待しています。
株主: ポイント制の導入後、サクラスの雰囲気が変わったなと思いました。次の一年も楽しみにしています。
ーーこうして株主選手交流会は閉会した。
今回開催された株主選手交流会では、2020年の「コロナ禍での業績維持」の振り返りと2021年の「業績維持に加えたエンタメ業界への貢献」という展望が説明された。また、株主からは新しい働き方のモデルケースになってほしいとの声があがり、期待を寄せられていることがわかった。
会の途中、選手達がそれぞれのモチベーションの源泉を一斉にチャットへと記入する一幕があったが、記入された様々なモチベーションの源泉には共通点があった。それは「社会からの評価が目に見えること」へのモチベーションだ。
サクラスでは顧客や業績への貢献を表すポイントを可視化し、競争するシステムが導入されている。これは池上社長の「選手達を評価するのは上司ではなく社会だ」という方針のもとでの取り組みだ。ポイントが重なることで選手達は社会からの評価、顧客からの喜びが増していることを実感し、大きなやりがいを感じている。この取り組みこそサクラスの選手達が高いモチベーションを保てる秘訣となっていることがわかった。
新しい働き方のモデルケースとなるべく、体系化された学生インターンの組織と共に2021年もサクラスは飛躍しつづけるだろう。
(文/蓮井拓摩=慶應義塾大学3年)
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